フローリストを探す インタビュー レッスン ショップ ウェディング プリザーブド ネットショップ シルクフラワー
<>
HOME ニューヨーク パリ オランダ <>
<>
フローリストの横顔 インタビュー エッセイ フラワーレポート センスアップ写真集 フローリストの皆様へ
Home > フローリストインタビュー > NO.003 松下奈奈

インタビューの間にも六本木や表参道周辺の たくさんのクライアントから電話がひっきりなしにかかってきていた 売れっ子デザイナーの 松下奈奈さん。
ロンドンでの修行もショップ開店時のピンチもすべて楽しくクリアしてきた道のりは、 多くの人に勇気を与えてくれるエピソードがギッシリです。
  ― はじめての挫折 ―

小さい頃からスチュワーデスになりたかったんです。 ところが、就職の時になってなりたいスチュワーデスになれなかったんです。 それまで、高校受験も含めてあまり失敗したことがなかったので 人生はなりたいものになれると思っていたんです。 だから不思議っていうか、はじめての経験だったんですね。 私にはスチュワーデスしかなかったから、他にやりたいことが見つからなくて。
  それで、オーストラリアに逃げたんです、私・・・逃避。(笑) 学生時代、英語科だったので名目上は語学留学ということで、ホームステイをしました。 ホストファミリーがいろんな趣味を持っていてハープ・ピアノ・陶芸・絵画・お花・・・ 週末になると私もくっついていって、お花を絵画として描いたりすることなどを いっしょに体験しました。そこでワイルドフラワーの美しさに衝撃が走ったんです。 それからお花っておもしろいと思うようになりました。

― 花の魅力に目覚める ―

じつは、母がガーデニングをやっているので、庭にたくさんの花や植物がある環境で 育ったから、花は身近なものでした。 それに高校の時、いけばなをやっていたのでもともと花が好きだったんです。 だけど職業にしようとは思っていなかったですね。 日本に帰国後、フラワースクールに週1回通うようになって、 だんだんはまってきて週2回に増やして、もっと学びたいと思うようになりました。 歴史上、アレンジメントと呼ばれるものは、イギリスからはじまったって 聞いていたので、「じゃあちょっと気合入れるかー」ってことで イギリスの学校を探しました。
  ― ロイヤル・スタイル ―

コンスタンス・スプライの特徴の1つがオアシス(吸水性スポンジ)を使わないこと。 オアシス社ができたのが50年ぐらい前だから、その前からあるこの学校では、 「こけ」にひもをぐるぐる巻いたものを使ったり、ワイヤーをぐにゅぐにゅ丸めたものを 使っていたんですよ。ワイヤーって通常、茎どめぐらいにしか使わないけど、 コンスタンでは足どめとして本当にオアシス代わりに使うんです。 70年の歴史があるってほんとだな〜って思いました。 ワイヤー丸めるのすごくコツがいるんだけど、私得意でした。(笑) あと、カラーに関してすごく厳しくて、ビビット系とか絶対だめなんです。 パステル調のようなカラーにすごい誇りがある学校で、 いわゆる「ロイヤル・スタイル」っていうやつですね。
そこでみつけた学校が70年の歴史をほこるというのがうたい文句だったんですよ、名門校みたいな。 「ここだー!私の行くところ」「ここからはじめよー」と思って。 24歳の時、自分で200万ぐらいがんばって貯めてロンドンの花の学校 「コンスタンス・スプライ」へ留学しました。



 

―給料いらないから修行させてください―

コンスタンを卒業した後、日本に帰るのがもったいなかったんで 修行できる店を探すために「ロンドンでも出かけてみっかー」と思ったんです。 そこで、イギリスの雑誌や日本からもっていった雑誌のコピーを見ながら 花屋を探しまくって「マックウィーンフラワーショップ」という店を見つけたんです。 マックウィーンていう店が気になったので、手紙を書いたんです。 そしたら返事はこなくて・・・日本人て手紙に対して 返ってこないってすごくショックじゃないですか。
  でも、どうしても行きたかったんで、行ってみたんですよ。 すっごい緊張して・・・一回引き返したんですけど。 「ここで帰っちゃったら私なんのために外国来てるのかわかんない・・・門をたたけー!」 みたいな(笑) その時がたしか12月だったのかな、商売やってないから忙しいってわかんなかったんですよ。 「給料いらないから修行させてください」って言ったら「come on welcom !」って 快く迎えてもらえて「やったー」って感じです。 すぐに住むところを見つけて、給料もらえないから夜はジャパニーズレストランで働いて・・・ 昼も夜も働く二重生活がスタートしました。
 

― ロンドンでの楽しい修行時代 ―

お花屋さんで働いているうちに、花屋さんていいな〜と思って。 なんでかっていうと、すっごいおもしろいんですよ、マックウィーン。 ロンドンは、時間がきっちりしてて、6時になったらお客さんが来ても 終わりですって、言っちゃうんですよ。 日本と対照的で時間外の注文とか受けないんですね。 だから、午前中で終わっちゃうこともあったりします。 そのあと何やっていたかというと、踊ったりたばこ吸ったりワイン飲んだり(笑)

ロンドンてお昼時のランチタイムに普通にお酒を飲むお国柄なんですっごい楽しいんです。 反対にすっごい忙しいときもワイン飲むんですよー。「テンション上げろー」 「踊りながらつくれー」みたいな感じで。あっというまですよ、ほんと。 山ほどの段ボールに入ったバラを1本1本丁寧にトゲ取りするような、 繰り返す単調な仕事の最中でさえも、笑顔を絶やさないんです。 みんな仕事をしてるっていう雰囲気じゃないんですよ。遊んでる感じ。

フラワーデザイナーのエルコーレが「僕は一度も仕事をしたことがない」って言ってすごいと思った。 だから、そういうお店を目指してショップを開いたんです。 うちのお店で働いてる女の子、服装自由で、髪の毛も茶髪だろうがなんでもOK。 すごくのびのび働いてるみたい。

  ― 門前払いの日々 ―

27歳の時、日本でお店を出したいと思って、行動を開始したんです。 銀行・国民金融公庫・不動産屋さんといろいろまわりました。 27歳で独身でいちようキレイじゃないですか(笑) ちゃらんぽらんに見えるみたいで、「そんな甘くないよ」みたいな感じで、 真剣に話聞いてくれないの。つめたいーって思っちゃって。 不動産屋さんとかに申し込んだ物件が2〜3件あったんですね。 やっぱりいいなって思う物件は人気があるから、申し込んでいる人が他にもいて 結局ふるいにかけられちゃって、落とされちゃうんです。 もちろん、自分でお店を出すだけじゃなくて、 日本のお花屋さんで働くっいう道もあって、履歴書を出したりしたんですけど 「ロンドンで働いてました」っていう経歴が逆効果で 「ロンドンが何よ!フンッ。ここは日本よ」ていう感じで落とされてました。 200万もかけて、ロンドン行ってきて、日本でどこも雇ってもらえないという現実は、 悲しいっていうか、おかしいと思って・・・ 「いよいよこれは自分でやらないと」っていう気持ちが増すばかりでした。
― 仕事を通して気づいたこと ―

最初は、技術を習うつもりでイギリスに行ったけれど、 ロンドンでの仕事を通して、気づいたんです。 「技術じゃないんだ」って「大切なのは、お花を愛する気持ち」 まったく観点が違っていたの! だから、私がもし教室をはじめたら、生徒に教えてあげたいのは 生活に取り入れたお花のあり方・・・文化。 私が教室をはじめるのは、ちょっと難しいかなって思うんです。 なんでかっていうと、茎を曲げたり、ひねったりあまりしないから。 お花自体が美しいから、できるだけその花を活かしてあげたいんです。 結局そのまま刺せって・・・何にも教えることなくなっちゃう・・・ でも、お花に慣れることや身近なものにするエッセンスを教えられるかな。
 

― ついにチャンスをつかむ ―

またしばらくロンドンに行っていて、家の事情で日本に帰ってきたときに ちょうど物件が流れてきて、このチャンスは逃せないと思って。 まずは、資金だ。どっか貸してくれるはずと思って探して探して 女性企業家支援資金というのを見つけたんですよ。 さっそく行ったら、記入用紙をもらって、 企業の目的とか動機を書く欄がこんなに小さい枠しかないの。 私の動機とか目的は、ものすごくたくさんあるから、 とても書ききれない。何にも知らないから 違う紙に書いたら、30ページぐらいになっちゃって。 添付して出したらそれがよかったみたい。
  次には面接があって、いままでの経歴がどうのこうのって聞かれるんだけど、 私まともに就職してないじゃないですか、 だから「就職してなかったら事業できないんですか!」 「私は、こういう考えでこういうことやりたいんです!」 って言いたいこと全部言ったんです。 そうしたら、「熱意が伝わってきましたー」って言われて、 希望額の800万満額で融資してくれました。 だいたい満額融資ってありえないから、半分ぐらいを予想してて。 正直800万もいらないよって思ったぐらいです。(笑)

― 営業周り1日50件 ―

店をオープンした後は、昔バイトしていた時に知り合った人がたくさんいたので、 お花を買ってくれると思っていたんですね。だけど、ぜんぜん買ってくれなかったの。
  ちょっと人間不信ていうか、ショックで。 それで新しく開拓する必要があったの。 今日はここの地区って決めて、足で回って1日に50件営業まわったの。 でもぜんぜん営業とれません・・・人の紹介じゃないと。 2人雇っていたので、人件費2人分と家賃の支払と融資の返済があるのに、売上がなくて。 その時ほんとに思った。 神様に「こんなに働いているんだからとりあえず、 電気と水道と寝るところだけちょうだい」って。「あと何にも望まないからー」って。

― ターニングポイント ―

うちの店は、通りから見るとぜんぜん花屋っぽくなかったんです。 ドアは古い木の板で装飾してるし、店内は間接照明で暗い感じ、 なぜかお酒も置いてあるし、まるで居酒屋。 そんな店構えがめずらしかったのか、地元(九州)のローカルのTV番組で、 自転車で行き当たりばったりにお店を紹介する番組があったんですけど、それに出たんですよ。 そうしたら、急にお客が増えだして、昔の知り合いとかも「TV見たよ」って、 だったら最初から買ってよって思ったけど。 ここがターニングポイントだったんです。 TVに出るとラジオが来るんです。ラジオに出ると、雑誌が来るんです。そうしてお客さんもどんどん来る。 メディアの影響力って大きいなと思いました。
  ― シンプルは奥が深い ―

普段、意識してやっていることは、 ホテルやブティックを回って見ています、色あわせとか。 お花って、背景といかに調和するかが大切だと思うんです。 でも昔は、そういう意識がありませんでした。 マックウィーンの修行時代、ロサンゼルスのアカデミーショーの パーティー会場の飾りつけにはじめて行った時、すっごいシンプルな飾りつけで、 「なんだ簡単じゃん。誰でもできるじゃん」って最初思っていたんです。 それは、学校で習ったいかに形作るかという技術を追いかけていたから。 ところが途中で『器の配置』とか『色の組み合わせ』とか『背景との調和』とか 絶妙なバランスで構成されていることに気づいたんです。 そして、シンプルは難しい。できそうでできないんです。 私の課題は、いかにシンプルにするか。これが奥深いんです。
  基本の技術は大切ですけど、次の段階は背景とのコンビネーションセンスを磨くこと。 だから、お花が装飾してあるところの背景は常にチェックしています。 そうすると、頭の中にいろいろなことが蓄積されるんです。 そして、自分がデコレーションする時に、無意識に蓄積されていることから インスピレーションがわいてくるんだと思います。 仕事以外の時は、なるべく子供といっしょにいてあげたいので子供と遊んでいます。 それと、外国のインテリア雑誌をよく読んでいます。 日本のインテリア雑誌は、お花があったりなかったりするけど、 外国のものは、必ずお花が載っているんです。 やっぱり、お花と背景のコンビネーションを見ちゃいますね。

― ふさわしいものは伝わる ―

クライアントさんが求めているものと、私が作っているものに ギャップがあることがあります。 昔は、クライアントさんを逃したくないからクライアントさんに合わせた デコレーションを提供していました。 ところが最近は、その会場やシチュエーションに一番ふさわしい デコレーションを提供しています。 そうすると、最初クライアントさんはいやな顔をするけれど、 その会場を利用したお客さんの声を聞くうちにわかってもらえます。 会場を利用したお客さんが、今度は新たなクライアントさんになるので 仕事がどんどん増えていきました。

― お花は一部の人のものじゃない ―

日本中のみなさんがお花を身近に感じていただきたいなっていうのが私の夢ですね。 東京に来て知り合った、年配の上品できれいな女性がいるんですよ。 その人に「服装変えて、おしゃべりしすぎないで、もっとお上品にしなきゃだめよ。 あなたデザイナーなんでしょ。ここは東京よ。」って言われたんです。 その時は、「そうなんだーデザイナーっぽくしなきゃダメなんだ。 じゃあ今までの私のスタイルって間違ってるんだ、私変えなきゃ」って半年間変わろうとしたけど 結局、元にもどっちゃった。私は私だから。
  しばらくして気づいたんです。OLでも主婦でも水商売の人でもどんな人であっても お花っていうのは、愛していいもの。 一部の人のものじゃないっていうこと。そこを伝えたいですよね。 だから、私テレビに出たい!こんな服来たこんな私でもフローリストになれましたって。(笑) 気取ったデザイナーにはなりたくなくて、軽くいきたいですね。

■メッセージ

型にはまらないでほしいです。 お花を愛する気持ちだけは、忘れないで。 技術とか資格とか級とかは、気にしないで。 エライ先生とかに悪い評価をもらった時、 「私の作品ってもしかして、きれいじゃないかも」って卑屈にならないでほしい。 自分が生けた花に、いい悪いはなくて、自分がいいと思ったものがいいもの。 それよりも、お花が好きっていう気持ちが大切。 そもそも技術を身につけるためにお花をはじめるんじゃないでしょう。 お花が好きだから、お花をはじめると思うんです。 だけど、お花をやってるうちに辛いことや苦しいことや悪い評価が重なるうちに、 「お花が好き」ってこと忘れちゃう人が多いんです。 忘れちゃっても思い出してほしいですね。



松下 奈奈 Nana Matushita
コンスタンス・スプライ イギリス校へ留学 イギリス国家試験デュプロマ取得
ロンドンのフラワーデザイナー、エルコーレ・ モローニ氏に師事し、マックィーン花店にて修行
オランダ国家試験ダッチデュプロマ取得
以降、毎年3月にハリウッドで行われる アカデミー授賞式パーティー会場の花装飾を エルコーレ氏の下、手掛ける 。
現在、福岡にSHOP、赤坂にスタジオをもち、 イベント・パーティー会場・ホテル・ウェディングなど、 様々な現場のデコレーションを手がけている。


 

■一言ヒアリング

[好きな色]
 服は黒 お花は赤 文具は青
[好きな食べ物] コリアンダー
[好きなブランド] ブルガリ バカラ
[好きな雑誌] 25ans
海外のインテリア雑誌
[よく行くところ] 麻布十番
[好きな音楽] マドンナ
[健康で注意していること]
健康に注意しすぎないこと。 お酒もたばこもガンガンのんでます。
[好きな言葉] 初心忘れべからず



■インタビュー終了後のお話

昨日の深夜3時に六本木でデコレーションしたときに 手が傷だらけになっちゃって、見てくださいよこれ!



フローリストライフ
Copyright (c) FloristLife and icolu All Rights Reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます